まず、なぜ八王子ラーメンは「きざみ玉ねぎ」を具として使うようになったのか?
話は今から45年前に遡る。
昭和34年(1959年)、北野駅前で惣菜屋を営んでいたあるお店が区画整理による移転で子安町に引っ越すことになった。駅から離れてしまうため惣菜屋は難しいと考えた店主は「ラーメン店」を始めることにした。
その頃はラーメン店といえば出前をする中華料理店が当たり前で、ラーメン専門で、しかも店売りのみで生計を立てようとしたその店は、何か特徴を出そうと試行錯誤をしていた。
そんなとき、偶然、北海道旅行で「きざみ玉ねぎ」が入ったラーメンに出会ったのだ。しかし、北海道で食べたそのラーメンは食感は良かったものの、玉ねぎの辛味が抜け切らず、そのまま売るのは難しかった。
何とか玉ねぎの食感を損なわずに辛味を抜いたスープが作れないか、工夫を重ねた結果、考えついたのが油である。油は玉ねぎの辛味を抑え甘味を引き立ててくれたのだ。
現在、「八王子ラーメン」の多くは透明な油が表面を覆っている。各ラーメン店の取材の中でも、スープの素材は教えてもらえるものの、油のとり方、素材、部位は教えてもらえない。そのくらい、「きざみ玉ねぎ」と「油」の相性は抜群で重要なものなのである。そして、このラーメンスープに合うように八王子の製麺所(尾張屋滝井製麺所)がこの店の為に中華麺を作った。これが「八王子ラーメン」の始まりである。
一説には長ネギに比べ、玉ねぎは価格が安定していたから玉ねぎを使ったというものもあるが、それはあくまでも副産物であり、玉ねぎの食感と甘みを追求した結果、油に創意工夫を加えた八王子オリジナルのラーメンが完成したと考えたい。
このラーメンで開業した「初富士」はラーメン専門の店売りだけだったにも関わらず、大変な評判となり、その後、玉ねぎを入れたラーメンが八王子の各地に広がっていったのである。